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WATMASSを用いた
超高感度ガス分析装置 Ultrasensitive Gas Analysis System

超低ガス放出Q-mass (WATMASS)の技術と超低ガス放出真空構造材(0.2%BeCu合金) の技術を組み合わせた完全封止法による新しい発想のガス分析法です。 WATMASSの持つポンプ作用を巧みに利用することにより、 超高感度・超微量ガス分析が可能です。

デバイス分析型

基本分析法

WATMASSに下のような簡単な排気系を接続します。 計測室はトータルのガス放出速度がサンプルのガス放出速度より小さければ、 材質・形状は問いません。 WATMASSは非常にガス放出が小さいため、ベーク排気後、V1とV2を閉じた状態で、 分析管内部を10-7Pa台に保持できます。 この真空状態は、封じ切った状態を1年間続けても変わりません。 この封じ切った状態で計測室にサンプルを入れ、排気した後、V3を閉じてV2を開き、 サンプルからの放出ガスを分析します。計測室へのサンプル投入搬送系を工夫すれば、 連続検査も可能になります。

N2封止光デバイスのHe圧入リーク検査の例

上のデバイスガス分析装置は、N2大気圧封止の赤外線感知デバイスが、 気密不完全による不良と疑われている場合の、気密性を調べたものです。 現在、デバイスの気密検査は、一旦大気圧より高い圧力でデバイスにHeを注入しておき、 減圧したときに漏れてくるHeをリークディテクタで調べる方法で行われています。

この従来の検査法において、リークが発見できなかったが、 不良と判断されたデバイスサンプルを用いてテストしたものです。 テストでは、同じ条件でサンプルにHeを4気圧で圧入しました。 サンプルを大気中に取りだし、直ちに100℃に加熱していた測定室に投入し、 10分間ベークを続けながら排気し、その後測定室を強制空冷で25℃まで下げました。 サンプル投入後、分析状態までに要した時間は約30分です。 その後、バルブV2を開き、完全封止ガス分析を行いました。 N2はCOと質量数が同じなので、Nでモニターしました。 加圧Heがサンプルに入っていれば、30分間にガスが抜けたとしても、 N2に混じってHeがリークしてくると予想しました。

結果は下図のトレンドのようになりました。 サンプルからのHeリーク量は1.7×10-15Pam3/sと極微量でした。 これでは市販のリークディテクタでは発見できなかったわけです。 これに対して、WATMASSのNモニターの平衡圧 (バルブ開後30min)から求めた 窒素リーク量は7.5×10-13Pam3/sでした。 従来のHe圧入+リークディテクター検査を行わなくても、 N2の直接リーク検査だけでサンプルにリークがあることが判別できました。 完全封止ガス分析法は、簡便でありながら従来法より高感度なデバイス気密試験を可能にしました。

ガス放出分析内部ヒータ型

分析原理

WATMASSに上図のような排気系を接続します。計測室を0.2%BeCu合金で製作しますと、 合金の低輻射/高熱伝導の性質を活かした、レニウムフィラメント型ヒータ内蔵の分析装置を 準備することができます。 WATMASSは非常にガス放出が小さいため、ベーク排気後、V1とV2を閉じた状態で、 分析管内部を10-7Pa台に保持できます。 この真空状態は、封じ切った状態を1年間続けても変わりません。 この封じ切った状態で計測室にサンプルを入れ、排気した後、V3を閉じてV2を開き、 サンプルからの放出ガスを分析します。

本ヒータはサンプルの導入前に、計測室が超高真空に達した時点で高温フラッシュ (>1200℃×数秒)することにより、一瞬にして加熱系の脱ガスが完了します。 測定室の壁は低輻射(~0.03)の壁なのでフラッシュ時の輻射熱を吸収しません。 その後、サンプルを測定室に移動します(簡易なゲート弁が必要)。 ゆっくりレニウムフィラメントの温度を上昇して行きますと、 サンプルのTDS(昇温脱離ガススペクトル)測定が可能になります。 サンプルの保持はφ0.5程度の熱電対を用いるのが理想です。 測定室は低輻射/高熱伝導なので壁の温度が上昇せず、 サンプルからのガス放出だけを測定することが可能です。 サンプルのガス放出が大きい場合は、図のクローズドイオン源のWATMASSにして、 差動排気をすれば測定可能です。 本装置はWATMASSと測定室からのガス放出が小さいので、定量分析が可能です。 計測室へのサンプル投入搬送系を工夫すれば、連続検査も可能になります。

ガス放出分析外部ヒータ型

弊社の超低ガス放出Q-mass (WATMASS)の技術と超低ガス放出真空構造材(0.2%BeCu合金) の技術を組み合わせた完全封止法による新しい発想のガス分析法です。 WATMASSの持つポンプ作用を巧みに利用することにより、 超高感度・超微量ガス分析が可能です。 ガス放出分析外部ヒータ型は、小型の真空容器サンプルを用いて、 サンプルのガス放出速度とガス放出率を、高精度で求めるのに適してます。

分析原理

超・極高真空構造材のベーク脱ガス後のガス放出速度(率)測定は、 従来はスループット法かガス蓄積法で行われてきました。 どちらも10-9Pam3/s以下の低ガス放出速度測定となるので、 表面積を大きくしなければなりませんでした。大がかりな装置と時間、 そして多額の費用がかかりました。 これに取って代われるのが本ガス分析装置です。

ICF70で長さ100mm程度のサンプルを、WATMASSに付けます。 ベーク後、V1、V2を閉じて圧力が一定になったところで、 残留ガスのピーク強度を正確に測ります。V1、V2の両バルブを閉じた場合は、 分析管内は約2~3×10-7Pa程度の超高真空で安定します。 この状態は1年間続けても変化しません。 WATMASS自身のわずかなポンプ作用だけで超高真空状態が維持できるためです。 この時の残留ガスの成分はH2,CH4,COの3つです。 WATMASSの気体別排気速度(下記表)から各ガスのガス放出速度を求めと、 QH2=8.8×10-13Pam3/s、 QCH4=1.2×10-13Pam3/s、 QCO=1.0×10-13Pam3/sになります。 次にV2を開けると、一旦圧力が上昇した後、一定の圧値(高め)に漸近し、 排気速度とガス放出速度が等しくなったところで安定します。 増加分がそのサンプルのガス放出速度となります。 バックグランドが最も高い水素の場合でも、 1×10-12Pam3/s以上ならばそのガス放出速度を求めることが可能です。 サンプルの表面積は0.1m2程度ですから 10-12Pam3/s÷0.1m2=10-11Pam/sとなります。 この値は完全封止ガス分析法で確実に求められる水素ガスのガス放出率となります。 本方法は、外部加熱ですから、サンプルの温度を変化させ、アレニウスプロットで評価すれば、 測定精度はさらに高められます。また、TDS測定も可能です。

破壊分析型

分析原理

減圧封止MEMSのガス分析やガラス微細気泡の分析など、 非常に小さい部分に封じ込められたガスを真空中に膨張させてガス分析をします。 破壊する方法は分析するサンプルによって異なりますが、 MEMSの例では、体積約0.08mm3に約600~700PaでN2、 Krの混合ガスを封入したMEMSチップが、 規定通りにガスが封入されているかどうかの試験を行いました。 破壊装置では、タングステン針を直線導入器で押しつけてチップを割る方法で行いました。 チップ破壊後、測定室の圧力は4.2×10-5Paを示し、 この値から、ほぼ規定の圧力で封入されていることが判定できました。 しかし、チップにリークが有る場合は、N2が主成分で、他のガスは消失していました。 同じ手法を使えば、ガラスに閉じこめられた気泡(大気圧)のガス分析が可能です。 本完全封止ガス分析装置の体積は0.3L程度であり、 実用的最小検出分圧は10-9Paが可能ですから、 気泡径2~3μmまでの測定が可能となります。

WATMASSの各種気体に対する排気速度(10-7Pa~10-3Pa)

単位: ×10-6m3/s
ガス種 H2 D2 N2 CH4 CO CO2 O2 Ar
排気速度 6.7 6.7 2.9 6.1 2.7 21.0 71.5 0.063
<参考文献>真空 51 (2008) 647